第61章 #61 戦いの始まり
するとジャンがイェレナに向かって叫んだ。
「イェレナ!!アギトと車力はお前が拘束するんじゃなかったのかよ!仲間が余計に死んだんだぞ!!」
「すみません。確かに二人を穴に落としたのですが、私の失態です」
「その余波で獣が予定より多めに石礫を俺達にくれてやった訳か。道化にしては大した即興劇だった。なぁ、ヒゲヅラ」
リヴァイがジークを睨むと、ジークもリヴァイをじっと見つめ返す。
「そう睨むなよリヴァイ、小便ちびったらどうしてくれんだ。お前こそ大した役者じゃないか。俺を殺したくてしょうがなかったろうにな」
「俺は一番食いてぇもんを最後まで取っておくタイプだ。よーく味わって食いてぇからな」
「取っておきすぎてリリアちゃんに横取りされそうだな」
「………良く分かってんじゃねぇか」
リリアは機嫌悪く口を尖らせるとリヴァイの肩をバシンと叩いた。
その反動にリヴァイの体がよろめき、その強さを物語る。
するとエレンがゆっくり口を開いた。
「マーレ軍幹部を殺し、主力艦隊と軍港を壊滅させた。これで時間は稼げた筈です」
「世界がパラディ島に総攻撃を仕掛けてくるまでの時間かい?
私達は君が敵に捕まる度に命懸けで君を取り返した。どれだけ仲間が死のうとね。それを分かっておいて自らを人質に強硬策を取るとは……お望み通りこちらは選択の余地ナシだよ。君は我々を信頼し、我々は君への信頼を失った」
ハンジがエレンを冷たい瞳で見つめた。
もはや昔のような関係は崩れかけている。
「だがこうして始祖の巨人と王家の血を引く巨人が揃った。全ての尊い犠牲がエルディアに自由をもたらし、必ず報われる」
そうジークが言ったその時だ。
ゆっくり扉が開き、コニーが姿を現し涙を流しながらこう言った。
「サシャが……死んだ」
リリア、リヴァイ、ハンジ、そしてジャンが目を見開いた。
すると俯いたままのエレンがコニーに問う。
「コニー、サシャは最後に…何か言ったか?」
「肉……って…言ってた」
エレンは一瞬目を見開き、声を殺しながら笑い始めた。
信じられないという表情でジャンがエレンを見つめている。
しかしリリアは見逃さなかった。
そのすぐ後、エレンが悔しそうに歯を噛みしめたのを。