第61章 #61 戦いの始まり
「っち……そのツラ……地下街で腐るほど見てきたクソ野郎のそれだ。まさか、お前が…」
エレンはチラリとリリアを見たが目が合うとすぐに視線をそらした。リリアが悲しげな顔をし、それを見たリヴァイが再び舌を打つ。
「オイ、エレン。テメェ、リリアに何か言う事があるんじゃねぇのか?テメェの自分勝手な行動のせいでリリアがどんな目にあったと思ってやがる」
エレンは顔を上げた。
「……知るわけ……ないでしょう」
「っ!!」
リヴァイは眉をひそめると再びエレンに向かって足を振り上げた。
エレンの行為で右腕しかないにも関わらず怪我をし、さらにリリアの気持ちを踏みにじった事がリヴァイには許し難い事だ。
「やめて!!リヴァイ!!」
リリアがエレンを庇うように手を広げて前へ出た。
リヴァイが目を見開く。するとエレンが手を伸ばしリリアを後ろから抱きしめると、押し倒すようにして自分が上になりリリアを庇った。
それを見ていたアルミンとミカサもそのエレンの行動に目を見開いた。
振り上げられた足はエレンには当たらず、直前で止まった。
「テメェ……」
「リヴァイ兵長なら、リリア兵長が庇う可能性が高い事も分かっていた筈でしょう?そもそも…どうしてリリア兵長をこんな所に連れて来たんですか」
「あ?」
エレンは自分の下にいるリリアの背中に手を回して、体を起こさせた。
「大丈夫ですかリリア兵長」
「えっ…あ、うん……」
「どこか痛い所は?」
「ううん、ないよ…」
するとエレンは再びリヴァイを見上げた。
「そうか……まだ知らないんですね」
「はぁ?テメェさっきから何をワケの分かんねぇ事言ってやがる」
リヴァイはリリアの腕を引っ張りエレンから引き離す。エレンは後ろから現れた兵士に手を繋がれ拘束された。