第61章 #61 戦いの始まり
「本当の家族ではなかったのでしょう?何故そこまで恨む必要があるのですか?」
「あぁ?!」
リリアがイェレナを睨み付けると、イェレナはその今まで見た事のない鋭い眼光に少し怯んだ。
再びジークの胸ぐらを掴むと壁にガンっと頭をぶつける。
「お兄ちゃんは……エルヴィン・スミスは調査兵団にとってもパラディ島にとっても必要な人だった!!私の兄であり、親でもあり………私が初めて愛した人だ!!!」
リヴァイが視線を落とす。
「そうか……すまなかった」
「謝っても許さねぇよ……お前が死ぬまで憎んで恨んで殺してやるからな!!!!」
「ちょっとリヴァイ、お前女の子になんて言葉教えてんの?殺すって言ったぞ?」
「あ?良かったな、ここまで口の悪いリリアは相当機嫌が悪い時だ。なかなかない、運がいいぞ」
「えぇぇ…?」
リヴァイがリリアをジークから離すと、操縦席からアルミンが出てきた。
その表情は厳しいものだ。
「エレンが戻ってきたみたいです」
「っ?!」
アルミンはハッチを開けると手を伸ばした。
おそらくすぐ下にエレンがいるのだろう。
その手を取り、引き上げられたのは髪が肩まで伸び、髭の生えた一瞬エレンとは分からないくらいに変わってしまった彼だった。
そのエレンの後にミカサも無事に飛行船に乗り込み、リリアは胸を撫で下ろした。
後方でも音がしている、おそらく調査兵団達がどんどん戻ってきているのだろう。
するとリヴァイがエレンの前に足を進めた。
「なんて汚ねぇナリだ。クソ溜めに落ちたらしいな、エレン」
「兵長…」
リヴァイは眉をひそめるとエレンを思いっきり蹴り飛ばした。
ミカサが駆け寄ろうとするが、アルミンがそれを止めた。
それだけの事をエレンはしてしまったのだ。
「懐かしいな、エレン。相変わらずお前は蹴りやすい。拘束する、話はそれからだ」
「構いませんが、全ては手紙に記した通りです。ご理解頂けた筈では?」
リヴァイを見上げたエレンのその表情、瞳に光はなくあまり生気を感じない冷たいものだった。
それを見たリヴァイが舌を打つ。