第60章 #60 君の努力を知っている
「貴様ら!!こんな所で何を油を売っている、さっさと戻らんか!」
「き、教官!!は、はい!!」
声を上げたのはキース・シャーディス教官だった。
相変わらず厳しいのだろう、訓練兵らは慌ててその場から逃げるように去って行った。
リリアはキースに頭を下げると、深く息を吐いた。
「お前もここで何をしている」
「急に休みになったので、最近の訓練兵はどんな様子かと見に来たんです。そしたら絡まれました、あはは!」
「……少しは言い返さんか」
「まぁ、事実ですから」
キースはまったく、と小さく呟くとリリアの隣に腰を下ろし、二人で遠くでまだ訓練をしている数人の訓練兵を見つめた。
暫く会話はなかったがリリアの方から口を開いた。
「教官、私ね、こう見えて結構強いんですよ」
「知っている」
「それからね、私、昔結構頑張ったんですよ?」
「だから知っている」
そうか、とリリアは笑った。
キースは当時の団長だ、知っていて当たり前。
今の訓練兵はあまりリリアの事を知らない者が多い。
負傷した後から壁外調査でも前線で戦う事はなくなり、巨人がいなくなった今、その壁外調査もないため、活躍の場はない。
リヴァイと同じ階級なのに、彼のように強く見えない、それ故に"肩書きだけの兵士長"などとあだ名をつけられていた。
「死ぬ気で頑張ったのになぁ。そりゃあ今はそこまで訓練してないけど…」
するとキースがリリアの頭をガッと掴む。