第60章 #60 君の努力を知っている
リリアを元気付けるために作ってくれたニコロの特製パフェを食べ、リリアはレストランを後にした。
いい加減に兵舎に戻らないと、もしハンジが部屋に来た際にレストランに行っていたとバレたら怒られそうだ。
しかしリリアは部屋に戻らなかった。
部屋で一人でいるのが今は不安でならない、何かしら体を動かして気を紛らわせたかった。
向かったのは訓練場、そこには自主訓練をしている訓練兵達がいた。
リリアは少し離れた場所から彼らの訓練している姿を見つめ、昔は自分もこうやって訓練していた事を思い出す。
訓練兵時代のリリアはほぼ最下位で、期待など微塵もされていない兵士だった。
(よくお兄ちゃんに向いてないから荷物まとめて帰れって言われてたなぁ)
すると訓練を終えたのか、数人の訓練兵がリリアの側を通り過ぎていく。
兵士長のリリアが何故ここにいるのか分からずチラチラと見て去る者達の中で女の訓練兵が声を掛けてきた。
「リリア兵長、暇そうですね」
そう言われ、リリアは目を丸くした。
声を発した訓練兵の隣で、もう一人の訓練兵がその子の発言を止めた。
しかし顔は笑っている。
「ちょっと失礼よ?」
「えー?だって他の調査兵はマーレに向けて命賭けて作戦に出たのに、リリア兵長はこんな所で暇そうじゃない」
リリアは苦笑いをした。
確かにその通りだ。
昔の自分なら何か言葉を返しただろうが、今はあまりそんな元気はない。
「本当に肩書きばっかり」
「だから失礼だってば!!もう!」
その時だ。
後方から誰かが声を上げた。