第58章 #58 エレンからの手紙
「あの香り袋、大事な物なんですね」
「あぁ。大切な人から貰ったんだ。お守りにしてる」
「そうなんですか。あ、もしかしてクルーガーさんの彼女さんからですか?」
クルーガーは小さく笑うと首を振った。
「いいや、俺の先輩だ。出会った頃から優しくて温かくて、いつもオレの心配をしてくれて。血の繋がりはないけど姉みたいな、そんな存在だな」
「へぇー!!」
「ただ心配事があって…」
「何ですか?」
「彼女はある事で左腕が無くて不自由な生活をしていたんだ。それなのに、出ていく時に俺が残った右腕に怪我をさせちまった。それが治ったのかどうか…」
そうなんですか、とファルコは暫く黙ったがニコッと笑いクルーガーを見上げた。
「きっと大丈夫です!信じましょう!!」
「そうだな」
「そうかー、クルーガーさんのお姉さんみたいな人か。会ってみたいなぁ。どんな人なんです?見た目とか!」
クルーガーは空を見上げた。
「元々は金髪だったんだが色々不幸が重なって、ストレスで今は銀髪になっちまってる。瞳は綺麗な青色で……甘えたがりで泣き虫で、でも怒ったら凄く怖くて。そうだな…オレの中では世界一可愛い人だと思ってる」
「え??容姿がです?凄い自信持って言いますね。世の中にはかなりの人がいるのに」
「オレの中ではだぞ?」
「ますます会ってみたいです!お名前はなんて?」
クルーガーは柔らかく笑った。
その表情はファルコも今まで見た事がない、優しいものだ。
「リリア……リリア・スミス」