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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第58章 #58 エレンからの手紙



マーレのレベリオ収容区、そこはマーレに住むエルディア人の居住区だ。
その中にある精神病院の中庭にあるベンチに男が一人座っていた。
髪が長く、無精髭を生やしている。
左足が欠損し、左眼も負傷しているのか包帯を巻いていた。
その男に駆け寄る薄茶色の短髪の少年、たまたまこの男と出会い親しくなったようだ。


「クルーガーさん!!」
「よぉ、ファルコ」

少年の名前はファルコ・グライス。
マーレの戦士候補生で日々戦士になるための訓練をしている。
ファルコはクルーガーと呼んだ男の隣に座り、カバンから裁縫道具を取り出した。

「これでいいんですよね?針と糸」
「あぁ、悪いな。この病院には衣類を直すような道具もなくてな」
「まぁ……怪我をしてしまう道具ですからね。ここには置けないのかも。それにしてもコレを何に使うんです?」

クルーガーが取り出したのは小さな薄緑色の袋だった。
汚れ、穴が空いている所もある。

「これを修繕したくて。穴が空いたから中身が出ちまう」
「あぁ、本当だ。でもまずは袋を洗いましょう!この汚れならきっと取れますよ」
「そうだな」
「俺、洗ってきますから中身出してもいいですか?」

構わないと言われ、ファルコは袋を開けた。
中には乾いた花がたくさん入っており、ほんの微かだが良い匂いがする。

「良い匂い…香り袋ですね」
「あぁ。もう匂いは殆ど消えてるけどな」

中の花が風に飛ばされないようにファルコは大事にハンカチに包むと、残った袋を手洗い場まで洗いに行った。

今日はいい天気だ、おそらく日向に置いておけばすぐに乾く。
その間二人は再びベンチに座り、話し始めた。


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