第56章 #56 幸せになれ
ナイルに連れられレストランに到着すると店員がナイルの姿を見て奥の方の席へと案内した。
おそらく王都に来た時によく利用するのだろう。
リリアは辺りを見渡し店員に声を掛けた。
「すみません、ニコロさんいらっしゃいますか?」
「ニコロですか?お待ちください」
暫くするとニコロが厨房からテーブルの方に向かってきた。
その姿を確認し、リリアが手を振る。
「誰かと思ったらお前!戻ってきたのか?マーレに行ってたんじゃ?」
「怪我して戻ってきた」
「怪我?あ、お前なぁ。ただでさえ片腕なんだから気を付けろよ?何でそうなったんだよ」
「こけちゃってね、それでね、こんな手でも食べられるご飯ないかな?スプーンは持てる!」
ニコロは少し考えると分かった、と頷き、ナイルの注文も聞いてから厨房に戻った。
エレンから受けた怪我を、こけたと言うリリアにナイルは本当にリリアはエレンの事が大事なのだなと感じた。
やはりリリアが自分でエレンを逃したなど到底思えない。
「ここのシェフと知り合いか?」
「うん、私が捕まえた捕虜の一人なの。良い人だよー?」
するとニコロが料理を持って二人の元へ戻ってきた。
リリアの前にスプーンでも食べやすいリゾットや小さく切られたパン、スープ、デザートなどがたくさん並ぶ。
「美味しそう!」
「てかお前さ…」
「ん?」
ニコロがリリアとナイルを交互に見る。
何故憲兵団の師団長と一緒に食事をするのかが理解できないらしい。
何やら怪しい関係と思われている。
「あの……憲兵団の師団長ですよね?何でコイツと……」
「ん?あぁ、何だ?変な関係に見えたか?」
ナイルが笑う。
確かに何も知らない者から見れば、調査兵団の兵士長といえど違う兵団の師団長と食事に行くような親しい関係なのは謎だろう。
「リリアちゃんとは家族ぐるみの付き合いなんだ。妹みたいに可愛がってる。思ってる関係ではないぞ?」
「そ、そうなんですか」
「ナイル兄ちゃんは小さい頃からお世話になってるの。もう一人の私のお兄ちゃんだよ!今日は久し振りに一緒にご飯!」
「なんだよ、驚かせんなよ」
ニコロなりに心配したようだ。