第55章 #55 エレンの失踪
「ちょっとリヴァイ……リリア責めてる?」
「責めてねぇよ。ただ…アイツの甘さが招いたことは事実だ。油断しなきゃリリアがエレンに負けるとは思わねぇ。あそこで半殺しにしとけば怪我する事もなかったのによ」
「あのねぇ、リリアはアンタと違うんだよ?大好きな可愛がってる部下を半殺しにできる訳ないでしょ。エレンなら言葉で分かってくれると思ったのさ。まぁ……結果がこれだけど……リリアは相当傷付いたと思うよ?」
チッと舌打ちをして、イライラしたようにリヴァイは頭を掻いた。
部屋に戻ったリリアはパラディ島へ戻る準備をしていた。
しかし手の怪我のせいでなかなか進まない。
するとドアを叩く音がし、リヴァイが部屋を訪ねてきた。
「手伝う」
「リヴァイ……ありがとう」
大きなカバンに淡々と荷物を詰め込むリヴァイ、その間に二人に会話はない。
用意していた持って行く物はすぐにカバンに納められ、準備は終わった。
「これだけか?」
「元々少ないしね。ありがとう」
「なら早く寝ろよ?着替え手伝う」
「うん…」
リリアの介助はリヴァイにとっては慣れたもの、着替えもあっという間に終わる。
勿論その間も会話はなかった。
「じゃあな、おやすみ」
「リヴァイ」
「なんだ?」
「……ううん…ありがとう。おやすみなさい」
リヴァイは一瞬リリアに近付こうとした。しかし拳を握り歯を噛みしめるとそのまま部屋を出ていった。
彼がいた場所を見つめるリリア、普段なら優しく抱きしめてくれるのに。
怒ってはいないと言っていたが、やはりエレンを逃した事に関して苛立っているのだろうか。
会場を出る前にハンジやリヴァイに声をかけておけばエレンを止められたかもしれない。