第55章 #55 エレンの失踪
アズマビトの屋敷に戻るとオニャンコポンと共に急ぎ病院へ向かう事となり、早急に治療が行われた。
治療を待つ間、リヴァイは苛立った様子でリリアを待っていた。
その隣でオニャンコポンが心配そうに治療室を見つめている。
「手の位置がきちんと戻ってくれるといいですね…」
「………」
「それにしても出血の酷い怪我じゃなくて良かった。輸血が必要になってたらマーレでの治療は無理でした」
輸血が必要になったらリリアがユミルの民だとバレてしまう。
骨折だけだったのが唯一の救いだ。
「リヴァイ兵長…なんか怒ってます?」
「あぁ?」
「ひぇっ!すみません!!」
すると治療室の扉が開き、部屋の中にいる医師らに頭を下げ、リリアが二人の所まで戻ってきた。
右腕はしっかり固定されている。
「ごめんね、お待たせしました」
「大丈夫です?」
「うん、腕は上がるようになったし、指先はホラ、動く。手首も元の位置に戻ったけど暫くは動かしちゃダメだって」
良かった、とオニャンコポンは胸を撫で下ろした。
しかしリヴァイはまだ機嫌が悪い。
「リヴァイ……あの…迷惑かけてごめんね」
「別に迷惑なんて思ってねぇよ。帰るぞ」
普段ならリリアの歩幅に合わせて歩くリヴァイだが、今日はスタスタと自分のペースで先を進んで行く。
腕の振れないリリアは段々とスピードが落ち、リヴァイに着いて行けなくなってしまった。
それに気付いたオニャンコポンがリヴァイに声を掛ける。
「待って下さい!兵長、早過ぎですよ、リリアさんが着いて来れてないです!」
ハッと我に返ったリヴァイは足を止め振り向いた。
「…悪い」
「私、ゆっくり帰るから先に行って?」
「いや、すまなかった」
「もういい……リヴァイ怒ってるから…先に行って」
大きくため息をついたリヴァイはリリアの前に立ち頭に手を置いた。
「悪かった。お前に怒ってる訳じゃない」
泣きそうな表情でリヴァイを見つめるリリアに、リヴァイは謝罪しながら彼女の頭を抱きしめた。
ツラいのはリリアの方だ、あれだけ慕っていたエレンに突き放されたのだから。
「とにかく帰りましょう?暗くなります」
オニャンコポンの言葉にリヴァイは頷くと、リリアの肩を抱き今度はゆっくり歩き出した。