第54章 #54 楽しき時間
周りのお店を見ながら進むリリア達、するとリリアはふとサシャの後ろに立っている少年に目を止め、隣にいるリヴァイの服を軽く引っ張った。
(ねぇ、リヴァイ。あの子)
(………あー、スるな)
自分も地下街いたためによく分かる。
サシャの後ろに立っている少年は彼女の財布を盗るだろう。
しかしまだ声はかけない、かけるのは少年が財布を手にした時だ。
しばらく見ていたリヴァイとリリア、すると思った通り少年はサシャから財布を抜き取った。
その瞬間にリヴァイが少年の手を掴む。
「オイ、それはお前の財布じゃねぇぞ」
「っ?!」
少年が驚いたようにリヴァイを見上げた。
「スリだ!!」
「また敵国の移民か、どうやってここに来た」
「言葉が通じてないな」
騒ぎを聞き、周りの人々がざわめき始め、少年を囲う。
どうやら移民の子らしく、言葉が伝わっていない。
海に放り投げる、右手をへし折ってやろう、通りの目立つ所にしばらく吊るしておこうなど少年に向かって恐ろしい言葉を次々に言う大人達。
そんな雰囲気を感じ取ったのか少年が震え始めた。
「そんなやり過ぎです!私の財布は無事なんですよ」
「これは嬢ちゃんの問題じゃねぇ」
サシャが訴えるが皆聞く耳を持たない。
「しっかり罰を与えて示しをつけねぇと、ここで商売をして生きている俺たちの問題だ」
「何より国を追われた"ユミルの民"かもしれねぇ」
「っ?!」
リリアはリヴァイを見た。
このままではこの少年が酷い目に合うのは確実だ。