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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第53章 #53 いざ、マーレへ



(明日はついにパラディ島から出るのか…凄いな、こんな日が来るなんて)

壁から出る事でさえも困難だった我々が、ついに島から出て違う国へと行くのだ。
緊張してバチバチに目が冴えてしまっている。

(た、大変だ…)


あまりに寝られずリリアは部屋から出ると空が見える渡り廊下に足を運んだ。
そこには先客がおり、その人物はリリアの気配に気が付くとゆっくりと振り向いた。

「リリア兵長」
「あれ、エレン」

エレンだった。
リリアはエレンの隣に付くと空を見上げた。

「エレンも寝れないの?」
「えぇ…まぁ」

会話はそこで止まる。
横目でエレンを見ると寂しげで、つらそうな表情をしていた。

「……エレン」
「はい」
「何度も聞くけど……何か心配事でもある?最近元気ないよ?」
「いえ、別にないです」
「でも……」
「しつこいな!!何もない!!」

ハッとエレンが口を押さえる。
今までリリアに対し、こんなキツめの口調をしたことがないため、リリアも驚き目を見開いた。

「ごめんなさい…」
「ううん、こちらこそごめんね。誰にだって言えない事あるよね!」

さらに空気が重くなる。
エレンは一歩下がると頭を下げた。

「おやすみなさい。また明日」
「エレン!」
「……」
「私はいつでも話聞くから。一人で悩まないでね」

返事はなかった。エレンは再び頭を下げるとその場から去っていってしまった。
エレンの後ろ姿を見送った後、リリアは悲しげな顔をし空を見上げた。

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