第52章 #52 約束
「まぁ、ほっとけ!男には…女に言えねぇ用もある」
「…指の感覚って何だろ……さっきも指グリグリしてきてたし…」
「しかしまぁ、何で急なんだ?そんな大事な事を…」
どうやら店主にはリヴァイが何をしたいのかが分かっている様だ。
しかしリリアはまったく分からない。
「今日急にリヴァイが出掛けるって。本当はお休みじゃなかったんです」
「思い付きかよ!仕方ねぇ、俺がサポートしてやるか。お嬢さん!リヴァイの野郎を驚かしてやろうぜ」
「驚かす?」
並んだ服の中から店主が選び、リリアに合わせる。
「好きな感じとかあるか?色は?」
「えっと……この前とある任務で可愛い服着たんです。それが欲しくて。こう…スカートがフワッとしてて柔らかい感じ」
「なるほど…。じゃあコレだな!好きな色はあるか?」
「特別好きなのはないです。あの、私に似合うの選んでください!」
「任せろ!」
店主はリリアの言うスカートの裾がフワッと風で広がる様な優しい素材のワンピースを選んだ。
腕のない左側の袖は切り落とし、変わりに大きなリボンでその部分を覆った。
色は瞳の色に近い淡い水色、それにブーツ。
加えて髪を下ろし整え、化粧もしてくれた。
見た目は大柄で少し怖いイメージの店主だが、何でも出来る凄い人物だった。
鏡で自分の姿を確認したリリアは何度も何度も振り返り嬉しそうに回っている。
「わぁ!可愛い!!腕がなくても不自然じゃないし、嬉しい」
「似合うぞ!元がいいから化粧も映えるなぁ。銀髪も輝いて綺麗だしな!満点だ!!」
「あのっ……お代を」
「いらねぇよ、俺からの祝いだ!!」
「祝い?」
店主は腕のリボンをキュッキュッとしっかり結ぶとポンっと頭に触れた。
「これからもリヴァイをよろしくな」
「あの……はい!!有り難く頂戴します!!」
満面の笑みでリリアは再び鏡を見た。
この姿を見たらリヴァイは何と言ってくれるだろう。
そこまで感情を表に出す人ではないから反応は薄いかもしれない。
リリアはリヴァイの帰りを今か今かと待った。