第51章 #51 偽物の好き
もう辺りは暗い。
用も済み、部屋に戻ろうとしていたイェレナに誰かが声を掛けた。
「こんばんはイェレナ」
「おや、これはこれはハンジさんじゃないですか。どうされました?」
壁にもたれて彼女を待っていたハンジは、ゆっくりとイェレナに近付いた。
「一つお願いがあってね」
「はい」
「リリアとリヴァイの関係を取り乱す事はやめてもらえないかな」
一体何を言い出すのがと思いきや、個人的な話を持ちかけられイェレナは驚いた様な表情をしていた。
しかしすぐに笑顔を向ける。
「私が何かしました?」
「どこでアッカーマンの事聞いたのか知らないけど…リリアが不安がる様な事を言わないでくれ」
「あぁ、ただ噂に聞いた事を口にしただけです。ですが…そうですか、リリアさんは傷付かれたのですね。申し訳ありません。あの性格のリヴァイ兵長が溺愛しているので本当かと思いまして、つい」
謝罪はするが顔は笑顔で特に反省の色は見えない。
ハンジは深く息を吐いた。
「ようやく安定してきているんだ。それに二人には幸せになってほしい。だから…」
「分かりました、以後気を付けます。では」
ハンジを通り抜けたイェレナだったが、思い出したかの様に足を止め振り返った。
「リリアさんですが年齢の割に精神年齢が低すぎませんか?」
「色々理由があるんだよ。それに公の場ではちゃんとしてる。リリアの事は気にしないでくれ」
「もう関わりませんよ。あの子のあの性格は癪に触るので。少し意地悪しただけです」
とんだ悪口を言いながらイェレナは部屋へと戻っていった。
ハンジが再び壁に背をもたれ息を吐く。
「いいんだよ、習性だろうが何だろうがリリアとリヴァイが幸せなら……邪魔するな…」
あの二人にはどうか、どうか幸せになってほしい
大好きなんだ、大切なんだあの二人が
私の大事な
仲間………