第51章 #51 偽物の好き
リヴァイがリリアの前に膝を着く。彼女は水の入った容器を抱きしめ、膝を抱えたまま縮こまり動かず、リヴァイとも目を合わさない。
「リリア、立てるか?行くぞ」
「………」
「………水、美味かったろ?お前が飲みやすいようにしておいた。俺なりに考えたんだぞ?」
コクリと大きく一度頷くがリリアはまだ顔を上げない。
心配そうにハンジが二人を見つめる。
「リリア、顔あげて俺を見ろ」
「………や…」
「ちゃんと見ろ」
「やっ!!!」
リヴァイはリリアの頬を手で支えるとグッと無理矢理顔を上げさせた。
視界に入ったリヴァイの表情は優しいものだった。
「リリア、大丈夫だ。大丈夫」
「うっ…うっ……」
泣きそうだが何とか堪えたリリアは、大きく肩で息をし気持ちを落ち着かせた。
そして小さく呟く。
「大丈夫……」
リヴァイはリリアを立ち上がらせるとハンジを見た。
これ以上104期のメンバーを待たせるわけにはいかない。
「行くぞ」
「本当に大丈夫なの?」
「あぁ。リリア行くぞ」
持っている水を取ろうとしたがリリアはそれを拒んだ。
まるで小さな子供がぬいぐるみを取り上げられるのを拒む様にも見えた。
リリアからしてみればそうなのだ。リヴァイからの気持ちがこもった水、それを手放したくなかった。