第51章 #51 偽物の好き
「リリア兵長」
黙々と作業をしていると、エレンが声をかけた。
「少し休憩しませんか?」
「ありがとう、そうする」
影のある場所に移動し、二人並んで座る。
他のメンバーはまだ作業している者もいれば、二人と同様休憩している者もいる。
少し離れた場所でサシャとアルミンが水をめぐり暴れている姿が見えた。
「暑いね」
「そうですね、水あります?」
「うん!リヴァイが持たせてくれた!」
水を飲むと少しいつもと違う味がした。
わずか程だがレモンのような風味を感じる。おそらくリヴァイが水にレモンの果汁を少し入れたのだろう。
彼の気遣いが心にしみる。
「エレン、ミカサは?」
「あぁ、アイツはまだ作業してます。先に休んでろって」
「……ねぇ?"習性的に好き"ってどういう意味だと思う?」
「え?習性?」
あえて名前は避けたが、とある人からリヴァイが自分の事を好きなのは習性的だと言われた事をエレンに伝えた。
すると少し考えてエレンは口を開いた。
「それはアレですか?アッカーマン一族の習性的な話ですか?」
「分かんない……でも多分その事言ったのかな」
「アッカーマンは昔、王家の武家の一族でした。君主に仕える事で力を最大限に発揮する、と言われているからアッカーマンは自分の中で君主的な人物を決めているのかもしれませんね」
「ならリヴァイの場合はそれはお兄ちゃんだよね、きっと。お兄ちゃんからの命令に凄くこだわるし…」
あ、とリリアが気付く。
リヴァイはエルヴィンを君主的、守る対象としていた筈だ。
自分に好意を抱いたのも最初はエルヴィンの妹だから気にし出した可能性が高い。
リヴァイ本人が自分を好きになったのは巨人を倒した時の笑顔と言っていたが、笑顔でなく巨人を"倒した"行動でリヴァイがリリアを"認めた"だけだ。
それをリヴァイがリリアの事を好きになった瞬間だと勘違いしているのではないか。