第50章 #50 ジークの秘策
それから一年、ついにパラディ島は港を完成する事が出来た。
そしてついにこの日、外国からの要人を迎え入れる事となったのだが、その要人を迎える前に完成した港に集まり、初めてエレンをイェレナに対面させる事となった。
エレンは始祖の巨人の力を有しているため、今までイェレナ達には会わせなかった。
「エレン、一年前君に船ごと担ぎ上げられて以来ですね。これからよろしくお願いします」
イェレナがエレンに近付こうとしたが、リヴァイが前に出てそれを止めた。
あくまでエレンとは対面させただけなのだ。
「いいや、今後もお前らとの接触はない。顔を見せたのは最大限の譲歩だ」
「それで十分です。今日はめでたい日になる。港が完成して初めて外国の要人を迎えるのだから。パラディ島唯一の友好国、ヒィズル国。その特使、キヨミ・アズマビト」
海の向こうヒィズル国からやってきたキヨミ・アズマビト。
黒髪をまとめ、上品そうな女性だ。
彼女はどうやらミカサに会いたかったらしく、強く面会を求めた。
広間に呼ばれたミカサはキヨミと対面した。するとキヨミが何やら家紋の入った布をミカサに見せる。
「この家紋に見覚えはございませんか?」
「これは……」
その家紋に見覚えがあるらしく、ミカサは動揺した。
何やら右手首を掴み隠しているようだ。
すると隣にいたエレンがミカサに声をかける。
「見せるんだ、ミカサ」
「でもこれはお母さんが秘密にしてろって」
「子供の頃、俺には見せただろ。その秘密はきっとこの日のためだ。さぁ」
エレンに促され、ミカサは手首に巻いていた包帯を取った。
するとその手首にはキヨミが見せてきた家紋と同じ印があった。
「この印は死んだ母の一族から受け継いだ物です。私も自分の子に託すように言われました」
「あぁ、なんと健気な事でしょう……」
およそ100年以上前、アズマビト家の御祖に当たる将軍家子息はフリッツ王家と懇意にしており、このパラディ島に逗留していた。
そして巨人対戦後、ヒィズル国は敗戦国として立場を追われ、その混乱の最中、将軍家の忘形見はこの島に取り残されたとキヨミは言う。
「あなたは我々が失った一国の主の末裔、ヒィズル国の希望です」