第49章 #49 預けられた伝言
「お前、どうして今までそんな事を黙っていやがった」
「ヒストリアの身を案じたからです。オレの不確かな情報で巨人にさせる訳にはいかないと思っていました。軽率な判断であった事を認めます」
その言葉にヒストリアは目を潤ませた。
エレンはヒストリアの事を思い、今の今まで黙っていたのだ。
そんなエレンを見てリリアも柔らかく微笑む。仲間想いのエレンの気持ちが嬉しい。
「後でじっくり聞こう」
「しかしそれが本当だとすると、ジークの秘策にも筋が通る」
「正気か?!連中を信用する気か?!」
幹部達からの反対意見は止まらない。
するとザックレーがリリアの方を見た。
「リリア兵士長」
「はい」
突然名前を呼ばれリリアは少し驚きながら返事をした。
「エルヴィンならどうすると思うかね?」
「え?」
「ザックレー総統、彼女はエルヴィンの妹だが血は繋がっていない他人同士です。彼のような策は思い付くと思えませんが」
一人の幹部のその言葉にナイルがバンっと机を叩いた。
「オイっ!そんな言い方はないだろう!!謝罪しろ!!」
「ナイル師団長」
リリアが立ち上がり、ナイルに手を向けて止めた。
大丈夫、と。
リヴァイも発言した幹部を睨み付けている。
「別に策を聞いているわけじゃない。エルヴィンならどうすると思うか聞いているんだ」
「兄は、多くの命が助かるなら少しの犠牲は厭わない策を考える人でした。それを良く思わない人も多かった事でしょう。しかしそのおかげで我々は今、こうして生きています」
リリアは一呼吸おき、再び口を開いた。
「エルヴィン団長なら多くの命を救える方法を考えたでしょう。しかし今までの戦いと、今後の戦いは違います。エルヴィン団長がどうするか、私には分かりません。しかし私個人のお願いを聞いて頂きたい」
「何だ?」
「ヒストリアを犠牲にしたくない、この思いも尊重して頂けないでしょうか」
ヒストリアとエレンが目を見開いた。
「ふむ、君の意見はよく分かった」
リリアは軽く頭を下げると席に着いた。ふぅ、と深く息をするとコツンと隣にいたリヴァイに足で突かれた。
リヴァイなりに励ましているのだろう。リリアは真っ直ぐ前を向いたまま小さく微笑んだ。