第6章 #06 新兵勧誘式
「4年かけて作った大部隊の航路、全てが無駄になったのだ。
その4年間で調査兵団の6割以上が死んだ。4年で6割だ。正気の沙汰でない数字だ。4年後には殆どが死ぬだろう。しかしそれを超えた者が生存率の高い優秀な兵士となっていくのだ」
訓練兵達が騒めく。
しかしそれは訓練兵だけではない、壇上の横で演説を見守っている調査兵でさえ、エルヴィンの過激とも言えるその演説に慌てた。
これでは訓練兵達が怯えてしまい、誰も入ってこない。
「この惨状を知った上で自分の命を賭してもやるという者はこの場に残ってくれ。自分に聞いてみてくれ。人類のために心臓を捧げる事が出来るのかを。以上だ、他の兵団志願者は解散したまえ」
「団長、必要以上に脅しすぎではありませんか?一人も残りませんよ?」
そして皆の予想通り、どんどん訓練兵達はその場から去っていく。
残ったのはパッと見て人数が分かる程の少人数だった。
あれだけ恐ろしい事を言われれば当然だ。
エルヴィンは強い眼差しで残った訓練兵達を見つめる。
「君達は、死ねと言われたら死ねるのか?」
「死にたくありません!!」
その答えを聞いた瞬間、エルヴィンが穏やかに笑った。
「そうか。みんないい表情だ」
そして力強く残った訓練兵達に声をかけた。
「では今、ここにいる者を新たな調査兵団として迎え入れる。これが本物の敬礼だ。心臓を捧げよ!」
「はっ!!」
訓練兵達が一斉にエルヴィンに向かって敬礼をする。
きっと恐ろしかっただろう、しかし彼らはその恐怖に打ち勝ちこの場にいる。
「よく恐怖に耐えてくれた。君達は勇敢な兵士だ。心より尊敬する」
そしてこの中に
餌に食らいついた人間がいるのだろうか。