第44章 #44 海へ
しばらく馬で駆けたが、今までと違いなかなか巨人に遭遇しない。
出発前にハンジが言っていた。巨人達は人間の多い所を目指してやってくる。
もしかしたらウォール・マリアに侵入した巨人が殆どで、壁の外にはもうあまり巨人がいない可能性もあるのではないか、と。
「お前の読み通りだハンジ。ウォール・マリア内に入っていた巨人が殆どだったな。俺達は奴らを一年でほぼ淘汰しちまったらしい」
先頭を走るリヴァイとハンジは辺りを見渡す。
やはり巨人の姿は見当たらない。
「そんじゃ、予定通り目的の場所を目指すぞ」
調査兵団が目指す場所、それは壁の向こうの人間がこの島、パラディ島へ"楽園送り"をされていた場所。
エレン曰く、壁の向こうにある"マーレ"という国が罪を犯したエルディア人に巨人になる薬を打ち、このパラディ島を徘徊させる巨人にさせていたらしい。
今まで戦っていたのは、マーレ人によって巨人にさせられたエルディア人、自分達の同胞なのだ。
その時だ。
赤い信煙弾が空に放たれた。どうやら巨人が現れたらしい。
「巨人だ!」
「やっと現れたか、気を付けろ!!」
リヴァイはリリアを少し後方に下げさせた。
しかしそこにいた巨人は地面に這いつくばるような体勢で動けないようだった。
巨人がやって来た進路には草木が伸び、かなりの日数が経っている事が分かる。
エレンは馬から降りると動けないその巨人にそっと触れた。
「お、おい…!」
フロックが慌てて声を上げるが、巨人は動く事はなかった。
「楽園送りにされたオレ達の同胞だ。行こう、近いぞ」
「オイ!!コイツをこのまま置いて行くのか?!殺さなくていいのかよ!!」
動けない巨人を倒す事はない、フロックの声を聞く事はなく、調査兵団は再び馬で海を目指し走り出した。