第39章 #39 一歩前へ
「おい!急に何だってんだよ!!フロック、これから死んだ仲間を弔おうっていう式の場なんだぜ」
「何でもう終わった話を蒸し返すんだよ」
「お前らは上官に刃向かうわけでもなく、エレンとミカサを止めるわけでもなく、ただ見てただけだったよなぁ。なんの勲章だ?誰を弔う。これから補充する調査兵団には本当の事を言えよ。俺みてぇな腰抜けが間違えて入ってこねぇようにな!」
フロックは手を握りしめ、俯いた。
「エルヴィン団長なしでこれからどうするつもりなんだよ!そりゃ…俺みてぇな雑魚、使い捨てるしか使い道はねぇだろうが…そんな雑魚にだってなぁ…値踏みする権利くらいはあるだろう?」
「今ここでアルミンを責めるのは違うでしょう?」
フロックとリヴァイ班の全員が驚く。
口を挟んだのはリリアだった。
「リリア…兵長…」
「フロック…もうやめて。ここで色々言って何が変わるの?ただ傷付けるだけでしょう」
「……リリア兵長だってそう思ったでしょう?!なんでアルミンなんだって!!絶対に生きるべきはエルヴィン団長だったって!!だからそんなに精神的に参ったんでしょう?!」
リリアは一瞬視線を逸らしたが、大きく息を吐くとフロックを見つめた。
「思ったよ、どうしてエルヴィン団長じゃなかったのかって」
「だったら!!」
「家族のような幼馴染を助けたいと願うエレンとミカサの何が悪いの?」
「…は?」
「生きる方が残酷だと、もう楽にしてあげたいと思ったリヴァイの何が悪いの?」
皆がリリアの方を見ている。
エレンとミカサは俯き、拳を握った。
先程アルミンにはリリアは気にしていないと言ったが、本当はそうは思っていない。
大事なリリアの家族を犠牲にアルミンを優先したのだから。
しかし今、リリアはこの言い争いを止めようとしている。
自分だって苦しいだろう、なのにアルミンを守ろうと足を一歩前へ出したのだ。