第38章 #38 伝えたかった事
「一部屋頼む。あと傷薬と包帯を持って来てくれねぇか」
「おや、お嬢さんこんな寒い時にそんな薄着で…。怪我したのかい?」
宿屋の女主人がリヴァイの背負っているリリアを見て心配そうに話しかけた。
「すぐに用意するよ、2階の角部屋使いなさい」
「すまない」
リヴァイは用意された部屋に入った。
中は暖かい、リリアをベッドに寝かせると女主人が傷薬と包帯、温かなスープを持ってきた。
「これを。スープは温かいうちに食べなさいね」
「あぁ、悪いな」
女主人が部屋を出るとリヴァイは布団からリリアの足を出し、湯で温めたタオルで足を拭くと傷薬を付け包帯を巻いた。
そして再び足に布団を被せる。
「大丈夫か?」
「リヴァイ……ごめんなさい…怒らないで…」
「怒ってねぇだろ?」
リヴァイがリリアの頭を撫でると暫く沈黙が続いたが、リリアの方から口を開いた。
「絶対に来ないと思ったの……あの家はお兄ちゃんとナイル兄ちゃんしか知らない。リヴァイは…あの家を探す事は思い付かない、だからナイル兄ちゃんに聞く事もないと思ってた」
「そうか」
「ナイル兄ちゃんに聞いたの?」
「いや、最初はエルヴィンの家に行ったが誰もいなかったからな。お前はエルヴィンを待ってたんだろ?ならエルヴィンとお前の繋がりのある場所は限られてくる。お前を幼い頃から知っている住民にお前の生家を聞いた」
そう、とリリアは納得したようだった。
絶対に来ないと思っていたリヴァイが来た時、リリアの中で何かが変わった。
胸の中で熱いものが弾け、リヴァイの顔を見ただけで涙が止まらなくなった。