第5章 #05 殺された被検体
「結局分かりませんでしたね…」
「……」
リリアのしかめ面が憲兵団の兵士達にも恐怖を与える。
「……ご苦労様でした。団長、師団長への報告は私からしておきます」
「はっ!」
その場を後にしようと身を翻し、部屋から出ようとするとアルミンがリリアに声を掛けた。
敬礼をし、リリアに頭を下げる。
「リリア兵士長、私は第104期訓練兵、アルミン・アルレルトと申します」
「……何か?」
「あの……個人的な話で申し訳ないのですが、エレンは元気にしていますか?」
リリアがアルミンをじっと見つめる。
アルミン・アルレルト、確かエレンの昔からの友人だと資料で見た。
「元気です」
たった一言だけ返すと、リリアはアルミンの横を通り過ぎ、部屋を後にした。
いくら自分の性格をさらけ出そうとは言っても、全員にそうする訳ではない。
特に初対面の者には性格的にリリアは警戒してしまう。
それはアルミンに対してもそうだった。
その現場を見ていたコニーが慌ててアルミンに近付いた。
「アルミンっ!何してんだよ!!」
「えっ?ちょっとエレンの様子を聞いただけだよ」
「案外怖いもの知らずだな…お前……」
「そうかな。確かに視線は怖いけど……何だか本当は優しい人のような気がするよ。何となくだけど…」
はぁ?とコニーの呆れた返事を背に、アルミンはリリアの後ろ姿を見つめていた。