第5章 #05 殺された被検体
「犯人は見つからなかったか」
「うん」
リリアは団長室に戻り、先程の結果をエルヴィンに報告していた。
犯人は分からなかったが、エルヴィンはあまり気にしていないように見える。
おそらく既に次に向けて何か策があるのだろう。
「新兵勧誘式に餌を撒く」
「餌?」
「果たして喰いついてくるか……」
「……お兄ちゃん」
「なんだ?」
窓から外を見ていたエルヴィンの隣にリリアも立った。
「もう絞ってるね?」
「まだ確証はないがな……ある程度の予想はしている」
「……はぁ…。また怖い事言うんだろうなぁ……何人残るかな」
さぁな、とエルヴィンは返事を返し、机に向かい散りばめられている資料を集めた。
それには次に行う壁外遠征の作戦が書かれてある。
「新兵勧誘式が終わったら作戦を話す」
「はい。それじゃあ勧誘式の準備してくるね」
リリアは手を振ると団長室を後にした。
彼女を見送ったエルヴィンは再び鋭い視線で窓から外を眺めた。
エレン以外の知性を持った巨人が兵団内にいるのは明らか。
必ず捕まえる、そう強い意志がその瞳から感じられた。