第37章 #37 夢の終わり
「なんだ」
『リヴァイは最初は本当にお兄ちゃんに注射を打とうとしたの?それとも初めからアルミンに打つつもりで私に嘘を言ったの?』
「………」
リヴァイは小さく息を吐くと椅子に腰を掛けた。
リリアが自分を避けている理由が分かったからだ。
きちんと説明しないといつまでも彼女はリヴァイを避け続けるだろう。
「最初はエルヴィンに打とうとした。だがな、アイツの手を持ち打とうとした時にアイツは手を振り上げた。そしてこう言った。『先生、壁の外に人類がいないってどうやって調べたんですか』ってな。意識はもうなかった。なのに奴は無意識に手を上げて言ったんだ。どれだけ夢に取り憑かれていたと思う」
だからリヴァイはエルヴィンに打つのをやめた。
現実に連れ戻し、エルヴィンを再び悪夢に連れ戻すのはあまりにも酷だ。
「もう終わらせてやらねぇと…と思ってな」
「……」
「リリアに嘘を付くつもりはなかった。だが結果的には嘘をついた事になる。すまなかった…」
リリアは小さく首を振った。
最終的には嘘をついた事になったが、リヴァイは最初はエルヴィンに打つつもりだった。
理由もエルヴィンを思っての事、リリアはリヴァイを見ると口を動かした。
"分かった"
そう言うと布団に潜り込み顔を背けたまま目を閉じた。
リヴァイがリリアの身体に手を伸ばすと気配を感じたのかバシッと払われ、その手を見つめた。
「……変わってねぇ」