第36章 #36 生きろ!
次の日目を覚ますとすでにリヴァイはいなかった。
いつぶりだろうか、目を開けても側に誰もいないのは。
布団に潜り込み目を閉じると昨日のハンジの言葉が頭を巡る。
"リリアの事が好きだからに決まってるだろ?"
(リヴァイが私の事を好き?あり得ない…恋愛なんて興味なさそうな人なのに……しかも何で私?)
思い出せばリリアがツラい時には必ずリヴァイが側にいた気がする。
しかし何故自分なのだ、リリアには分からない。
(お兄ちゃんも知ってたの?だから私をリヴァイに任せたの?分からない…分からない…)
暫く布団に潜り込んでいたが、だんだんと周りに誰もいない一人ぼっちの孤独感がリリアを襲った。
体が震えて恐怖が襲う。
「うううぅぅ…」
普段はこの状態になるとリヴァイがすぐに身体を揺すり声をかけてくれていた。
(嫌だ……嫌だ…一人は嫌だ……お兄ちゃん…お兄ちゃん…!)
冷や汗が流れ血の気が引くのが分かった。
途端に湧き上がる死にたいという感情が抑えられなくなりそうなその時だった。
誰かが身体を揺すった。
「リリアちゃん!大丈夫か?」
ゆっくりと布団から顔を出すとナイルが覗き込んだ。
「リヴァイがまだ戻れないから様子を見にきた。うめき声がしたから焦ったよ、大丈夫か?」
「うぅぅぅ…!」
リリアは手を伸ばしてナイルに抱き着いた。
「一人で寂しかったよな」
「うぅぅ…」
「よしよし。本当に声出ないんだな……髪も…色が抜けたな…」
しがみ付いて離れないリリアの頭を撫でながらナイルがベッドに腰掛けるとさらに体に巻きつくように抱き着いてくる。
エルヴィンがいなくなり、リリアにとって今はナイルが唯一甘えられる相手なのだ。
(か…固められている……)
「リリアちゃん、散歩にでも行こうか。今日はいい天気だぞ?」
「うぅ…」
よいしょ、とナイルがリリアを抱え病室を出る。
外に出るのは何日ぶりだろう、天気は晴れ、気温もちょうど良い。
病院の中庭の椅子にリリアを座らすとナイルも隣に座った。