第5章 #05 殺された被検体
「リリア、リヴァイ、俺は一旦戻る。お前達も戻れ」
「分かった」
「今日やる予定だったエレンの実験はナシだ。ハンジもあの状況だからな。リヴァイは連絡があるまで待機しておいてくれ」
エルヴィンがその場を去ると、リリアとリヴァイの間にピリピリとした空気が流れた。
どうも昨日からリヴァイの様子がいつもと違う。怒っているわけではないが明らかに機嫌が悪い。
暫く沈黙が続いたが、はぁと息を吐き先に口を開いたのはリヴァイの方だった。
「……悪かった。別にお前は何もしてねぇよ」
「分からないからさ、言いたい事あるならちゃんと言ってよ」
「そ……」
「リリア兵長」
リヴァイの言葉を遮るように、エルドが声をかけた。
後ろにはグンタとペトラ、オルオ、エレンもいる。
「おはようございます、大変な事になりましたね」
「そうだね…」
「リヴァイ兵長、これからどうしますか?」
「お前らの立体機動装置の確認後、本部に戻る。あとは指示を待つ」
分かりました、とエルドが頷く。
「私も行くね、立体機動装置の確認を見るのと、あと新兵勧誘式の準備もあるし…」
「あ、私も後から合流します」
ペトラが手を挙げる。
どうやらペトラも新兵勧誘式に参加するようだ。
そうなんだね、とペトラに笑顔を向けるリリアに彼女も嬉しそうに笑い返した。
「それじゃあ、また!」
「リリア兵長〜!!」
オルオが名残惜しそうにリリアの手を握る。
やめなさい、とペトラが小突くと、すみませんと何故かエルドが謝ってきた。
それを見ていたリヴァイがため息をつく。
「リリア、早く行け」
「オルオ、またね!」
オルオが渋々手を離すと、リリアは手を振ってその場を後にした。
「オルオ…あんた…相手がリリア兵長って分かってる?」
「あん?分かってるに決まってんだろ。なんだ、ペトラ、ヤキモチか?悪いが今の俺はリリア兵長に一直線だ」
「……もう勝手にしなさいよ」
二人のやり取りにリヴァイがさらにため息をつく。
こうなりそうだからあまり本当の性格を出してほしくなかった。
エレンに優しくするのも、他の者達から好かれるのもリヴァイにとっては面白くない。
そう思う自分にますます苛立ってしまうのだった。