第35章 #35 さようなら
エルヴィンの体を運んだ直後、エレン達がハンジの元に集まったが、リリアのグッタリした姿に言葉が出ない。
無理もない、何よりも大切な人を失ったのだから。
「とにかく壁に上がって……周囲の監視と生存者の確認をしよう」
「はい……」
「リリア立てる?」
しかしリリアは立ち上がろうとしない、出来ないようだ。
するとジャンがリリアを抱き上げた。
「リリア兵長は俺が…」
「頼んだよ」
壁に上がると、まだ意識のないアルミンと大怪我をしているサシャを寝かした。
左腕はハンジが止血したが既に出血が多かったのだろう、顔の色が真っ青で貧血を起こしているのか頭を上げない。
相当痛いだろうに、リリアは全くといっていい程無反応だった。
するとエルヴィンを別の場所に移したリヴァイとフロックも壁を上がってきた。
リヴァイはリリアの前に膝をつくと顔を覗き込んだがリリアはピクリとも反応しない。
「………」
「リヴァイ、ちょっと…」
ハンジはリヴァイを呼び、皆から少し離れた。
「ねぇ、リリアとエルヴィンだけど……」
「………」
「あの二人、兄妹以上の関係だった、よね。リリアのあの様子だと」
「………知らねぇよ……だが……そう、だったのかもな」
今まで長年あの二人と一緒にいたリヴァイとハンジだが、リリアが一度としてエルヴィンの事を名前で呼んだ事などない。
「あの落ち込み具合は半端じゃないよ。放っておいたら命を断ちかねない」
「エルヴィンはそれを望んではいない。特攻前にリリアを任された」
リヴァイが眉をひそめる。
しかしあのリリアを立ち直らせる事など自分に出来るのか、リヴァイには自信がない。
いくらリヴァイの方から手を差し出しても、リリアがその手を取らなければ無理だ。