第34章 #34 決断
「お前ら…自分で何をやっているのか分かっているのか?エルヴィンを…調査兵団団長を見殺しにしろと言っているんだぞ。時間がない、邪魔をするな」
エレンが注射の入った箱をリヴァイから奪うかのように握った。
「エレン、私情を捨てろ」
「私情を…捨てろ…?さっき注射をすぐに渡さなかったのは何なんですか?」
「エルヴィンが生きている、その可能性が頭にあったからだ」
「フロックが瀕死の団長を運んでくるなんて全くの予想外だった筈です」
「その通りだが、ここにエルヴィンが現れた以上、エルヴィンに使う」
エレンは目を見開くと、掴んでいた手を引き箱を奪おうとしたがリヴァイに殴り飛ばされる。
するとミカサがリリアを突き飛ばし、リヴァイに向かって飛び込んだ。
ミカサは力が弱まっている今のリヴァイからなら力づくで箱を奪えると感じた。
しかし自分に向けられた刃に目を見開いた。
突き飛ばした筈のリリアが後方から刃を構えてミカサの頭に向けている。
「お前らも分かっている筈だ。エルヴィンの力無しに人類は巨人に勝てないと!」
「そうだよ、ミカサ、もうやめろ!こんな馬鹿な真似…」
そう言ったフロックをミカサが睨みあげた。
すると殴り飛ばされたエレンがゆっくり立ち上がろうと腕を立てた。
「アルミンがいなくたって無理だ……だってそうだったでしょう?トロスト区を岩で塞いで守る事が出来たのも、アニの正体を見抜いたのも、夜間に侵攻することを思いついたのもアルミンだ。潜んでいたライナーを暴き出したのも、ベルトルトを倒す事が出来たのも、全部アルミンの力だ!!」
皆がエレンを見ていた。
「人類を救うのはオレでも団長でもない!!アルミンだ!!そうだろ!!ミカサっ!!!」
ミカサは再び力を入れた。
「渡して下さい!」
「ミカサ!!これ以上動いたら斬る!!」
リリアが刃を振り上げた、その時だった。
「人類を救うのは……エルヴィン団長だ…」
フロックが呟いた。