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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第34章 #34 決断



『哀れだ。歴史の過ちを学んでいないとは。レイス王によって全ての記憶を奪われた悲劇だ。だから何度も過ちを繰り返す』

獣の巨人は持っていた岩を力一杯握った。

『終いには壁の中の奴ら全員、年寄りから子供まで特攻させるんだろうな。どうせ誇り高き死がどうとか言い出すぞ。ふざけやがって』

バキッという音と共に岩は手の中で粉々になり、砂となった。
それを見た獣がハハッと笑う。

『粉々にしちゃったか。何やってんだ、俺。何マジになってんだよ。お前は父親とは違うだろ。何事も楽しまなくちゃ。みんなを誇り高き肉片にしてあげようぜ』

そして再び岩を掴み小さく砕くと、向かってくる兵士達に向かって投げた。
岩は次々と兵士に当たり、叫びながら倒れていく。これだけやればもう誰も向かっては来ないと思ったのか、獣は両手を上げた。


『っしゃー!!ゲームセット!!ははー!分かるか?投げ方を変えたんだよ。これならイチコロでしょ』

しかし上がった砂煙から現れたのはまだ残っている兵士達。


「撃てぇぇぇ!!!」

『だから、そんなもん撃って何になるってんだよ。そんなに叫んでなんの意味があるってんだよ!!』

獣の巨人は怒りと共に再度岩を投げた。
吹き飛ぶ兵士や馬、おそらくはもう誰も残ってはいないだろう。砂煙からは馬の足音はしない。

『あーあ…可哀想に……』

辺りが静かになった時だった。
獣は今まで自分の隣にいた巨人達が倒れているのを視界に入れる。

『ん?なんだ。俺の巨人が倒れて…』


その時だ。
兵士が向かってきていた前方の砂煙からアンカーが飛び出し、獣の巨人の体に刺さった。
同時に煙の中から一人の兵士が物凄い速さで飛び出してきた。

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