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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第33章 #33 心臓を捧げよ



リリアは新兵達を集めていた。
皆、不安そうな顔をしてエルヴィンを見ている。これから下される命令がどのような物かは大体想像出来る。

「これより最終作戦を伝える。総員による騎馬突撃を目標、獣の巨人に仕掛ける。当然、目標にとっては恰好の的だ。我々は目標の投石のタイミングを見て一斉に信煙弾を放ち、投石の命中率を少しでも下げる。最後尾からリリア兵士長が正面から攻撃、我々が囮になる間にリヴァイ兵士長が獣の巨人を討ち取る。以上が作戦だ」


新兵達は絶望的な顔をしていた。
その作戦は、自分達に死んでこいと言っているのと同じ。
中には吐き出してしまう兵士もいた。

「ここに突っ立っていてもじきに飛んでくる岩を浴びるだけだ。すぐさま準備に取り掛かれ」
「俺達は……今から…死ぬんですか?」

フロックが声を震わせながらエルヴィンに問う。

「そうだ」
「どうせ死ぬなら最後に戦って…死ねという事ですか?」
「そうだ」
「いや、どうせ死ぬならどうやって死のうと、命令に背いて死のうと意味なんかないですよね」
「まったくその通りだ」

フロックが目を見開く。

「まったくもって無意味だ。どんなに夢や希望を持っていても、幸福な人生を送る事が出来たとしても、岩で体を砕かれても同じだ。人はいずれ死ぬ。ならば人生には意味がないのか。そもそも生まれてきた事に意味はなかったのか」


リリアが視線を反らす。
生まれてきた事の…意味。


「死んだ仲間もそうなのか。あの兵士達も無意味だったのか」


エルヴィンは目を見開き、新兵達を見て叫んだ。


死んでいった兵士達に意味を与えるのは我々だ
あの勇敢な死者を、哀れな死者を思うことが出来るのは生者である我々だ


我々はここで死に、次の生者に意味を託す


それこそ唯一、この残酷な世界に抗う術なのだ、と。




リリアはゆっくり目を閉じ、エルヴィンの言葉を胸に刻んだ。


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