第33章 #33 心臓を捧げよ
「俺はこのまま地下室に行きたい。俺が今までやってこれたのも、いつかこんな日がやって来ると思っていたからだ。いつか答え合わせが出来るはずだと」
エルヴィンは自身の手をじっと見つめる。
「何度も死んだ方がマシだと思った。それでも父との夢が頭にチラつくんだ。そして今、手を伸ばせば届く所に答えがある。すぐそこにあるんだ」
そう、エルヴィンの夢はすぐそこだ。
もう目の前にある。
しかし自分はこれまでに何人もの命を犠牲にしてここまで来たのだろう。
他の者には心臓を捧げよと鼓舞しておきながら、自分は己の夢の為に地下室に行っていいのだろうか。
「だがリヴァイ、見えるか?俺達の仲間が。仲間達は俺らを見ている。捧げた心臓がどうなったか知りたいんだ。まだ戦いは終わってないからな」
投石は続き、石の雨は確実に近付いてきている。
響くのは新兵達の叫び声。
エルヴィンはリヴァイを見上げた。
「全ては俺の頭の中の子供じみた妄想に過ぎないのか?」
エルヴィンは迷っている。
ここでリヴァイが背中を押さなければならない。エルヴィンもまた、それを望んでいるように見えた。
リヴァイはチラリと隣にいるリリアを見た。
彼女の命もリヴァイ次第。
そしてリヴァイはゆっくりエルヴィンの前に膝をついた。
「お前は良く戦った。おかげで俺達はここまで辿り着く事が出来た。俺は選ぶぞ……」
すまない……リリア
今選ぶべきなのは……