第33章 #33 心臓を捧げよ
「エルヴィン、何か策はあるか」
リヴァイの問いに、エルヴィンは直ぐには返事をしなかった。
その時だ、壁の上にエレンが落ちてきた。
下にいたエルヴィンとリリアが目を見開く。
「エ、エレン?!」
「おい、アレはエレンか。壁の上まで吹っ飛ばされたって事か」
104期リヴァイ班も今必死にベルトルトと戦っている。
次々と飛んでくる投石、次第に今いる場所の近くに集中して飛んでくるようになっていた。
「獣はここらに当たりを付けたみたいだな」
「ここにも直ぐに投石がくるね」
リリアが呟く。
「エルヴィン、反撃の手数が何も残されてねぇってんなら敗走の準備をするぞ。あそこで伸びているエレンを起こしてこい。そのエレンにお前と何人かを乗せて逃げろ。少しでも生存者を残す」
エルヴィンは返事をしない。
何かを考えているようだ。
すると新兵のマルロとフロックが言い合いを始めた。
「おい!馬が逃げたぞっ!!お前らの担当だろっ!」
「うるせー!!もう意味ねぇだろ!!あんなに強かった調査兵団がみんな一瞬で死んだんだぞ?つーかお前も分かってんだろ?いくら馬を守ったってな…それに乗って帰る奴は誰もいねぇって!!」
人類を守る為には誰かが犠牲にならなければいけない。
その誰かを犠牲にしない為に、自分を犠牲に出来る者が必要だ。
そんな勇敢な者は誰だ?
それは自分だ、自分なら大丈夫だと、何の確信もなく思っていた。
こんなにも、こうして死ぬ事がなんの意味もない事だと今気付き、彼らは後悔しているのだろう。