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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第5章 #05 殺された被検体



暫くモブリットと話をした後、リリアは兵舎に戻った。

団長室を見るとまだ明かりがついている。
まだエルヴィンは団長室にいるようだ。リリアは自分の部屋には戻らず、エルヴィンの元へ向かった。


「ただいま」
「リリアお帰り。自分の部屋に戻らないのか?」
「明かりが見えたから、お兄ちゃんが終わるまで一緒にいるよ」

エルヴィンが苦笑いをする。
まだまだ仕事は終わりそうにないからだ。
しかしリリアは待っていると帰ろうとしない。

「じゃあリリア、お茶を淹れてくれないか?」
「了解!」

お願いをされお茶を淹れたリリアは、それをエルヴィンの机の上に置くと椅子を近くに寄せて端の方に肘を付いてエルヴィンを見つめた。
エルヴィンがどうした、と首を傾げる。


「団長補佐になってからこうやってお兄ちゃんの側にいられて幸せだなぁって」
「大げさだな」
「昔はお兄ちゃんが壁外調査に行く度に心配して泣いてたんだからね」

そうだったな、とエルヴィンが笑う。
昔、調査兵団が壁外調査から戻ってくる度に列に泣きながら走ってくる子供がいた。
駐屯兵に止められようともそれを振り切り、お兄ちゃん、お兄ちゃんと泣いてエルヴィンの元に駆け寄る子供、それがリリアだった。


「可愛かったな、あれは」
「は、恥ずかしい……」
「一つの名物になっていたからな。リリアが来ない日なんかは逆に皆が心配をしていた」

リリアは柔らかく笑った。
泣いて調査兵団の列に突っ込むほどエルヴィンの事を心配していたし、一人家に残されて寂しかったのだ。

唯一の家族だったから…。

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