第32章 #32 ウォール・マリア奪還作戦開始
するとリヴァイがエルヴィンの元へ向かってきた。
どうやら鎧の巨人、ライナーが壁を登ってきているようだ。
「総員!!鎧の巨人との衝突を回避しろ!奴に近寄るな!」
「了解!」
リリアはジッと獣の巨人の方を見ていたが、その隣にいた四足歩行の巨人に目を止めた。
その背中には荷物を運ぶ鞍があり、たった今巨人化したものではない。
「団長、あの四足歩行」
「あぁ。おそらくアレが斥候だ。あの四足型の巨人も知性を持った巨人、いやもっといてもおかしくない」
すると獣の巨人が雄叫びを上げ地面を叩いた。
その瞬間周りにいた巨人達がこちらに向かって走り出す。
ウトガルド城の襲撃の時と同じく奴らの狙いはまず馬。
敵の主目的はエレンの奪取だが、そのためにはまずこちらの撤退の選択肢を奪う事。
依然、自分達は馬なしでウォール・マリア領から帰還出来る術がない。
馬さえ殺してしまえば退路を閉鎖するだけでこちらの補給線は断たれる。
一週間でも一ヵ月でも動ける者が居なくなるまで、ただ待てばいいのだ。
そうすれば敵は虫の息となったエレンを奪い去る事が出来るのだから。
「団長、鎧がすぐそこまで!それにベルトルトがまだどこにいるか」
「あぁ、分かっている」
作戦を考えていたエルヴィンがようやく顔を上げた。
「やっと何かを喋る気になったか。先に朝食を済ませるべきだった」
リヴァイがそう言うとリリアがコツンと足で軽く蹴った。
「んだよ」
「もうっ!」
「ディルク班、ならびにマレーネ班は内門のクラース班と共に馬を死守せよ。リヴァイ班、ならびにハンジ班は鎧の巨人を仕留めよ。各班は指揮の元、雷槍を使用し何としてでも目的を果たせ!今この時、この一戦に人類存続の全てがかかっている!!今一度人類に、心臓を捧げよっ!!!」
「はっ!!!」
兵士達は一斉に壁の下へと降りていった。
リヴァイとアルミンも下へ降りようとしたその時、エルヴィンが二人を止めた。