第32章 #32 ウォール・マリア奪還作戦開始
「調べてきました。やはり何者かが野営していた模様です。ポットは冷めきって地面に道具が散乱していました。紅茶のような物を飲んでいたようです。それと黒い液体を注いだ様なカップが3つ。少なくとも3人が壁の上にいたようです」
リリアが眉をひそめる。
「3人?」
ベルトルトとライナーの他にも誰ががいたというのだろうか。
「鉄製のポットが冷めきっていたのか?」
「はい」
「それはおかしい…」
エルヴィンの呟きにアルミンも頷いた。
調査兵団は馬と立体機動を駆使して全力でここに到達した。この場所から接近に音や目視で気付いたのなら早くて2分前が限度、使用直後のポットが2分で冷めるはずがないのだ。
「おそらく5分か、それ以上前に我々の接近を知り、それに備える時間も十分にあったという訳だ」
「でもどうやって……」
「壁の上にいた3人以外の斥候が存在して…いや、もっと大勢の敵が潜んでいると想定すべきで…」
「今は敵の位置の特定を第一とする。アルレルト、君はその頭で何度も我々を窮地から救い出してくれた。まさに今、その力が必要な時だ」
「えっ?」
エルヴィンが手を振ると、辺りにいた兵士が集まってきた。
「必要な数の兵を動かし、内門周辺に敵が潜んでいないか探り出してくれ」
アルミンが目を見開く。
自分の前には指示を待つ兵士達、エルヴィンはアルミンに彼らに指示を与えろと言っているのだ。