第31章 #31 夢のため
「シガンシナ区から戻ったら言いたい事がある」
「えっ…?何、日頃の恨みつらみかな…」
「……そうだな……」
「えっ?!」
「んな訳ねーだろ」
グッと伸ばした手を引き寄せ、リリアを自分の胸に収めた。
「ぶっ!!」
「どうせ届かないなら伝えておこうと思ってる」
「何が?」
「だからそれを帰ってきてから言うって言ってんだ」
ふーん、とリリアは上目でリヴァイを見た。
なかなかリヴァイがリリアを離さない、胸の中でリリアがもがく。
「むー!!離してぇ」
「大人しくしてろよ。今くらいいいだろ」
「リヴァイなんか変わったねぇ。昔はこんな事しなかったのに。むしろ突き放される記憶しかない」
あー、とリヴァイが呟く。
「なつかれるのは苦手なんだよ」
「今はリヴァイがなついてくる…」
「嫌かよ」
「嫌じゃないけど、変なの!」
リヴァイは眉をひそめるとリリアの髪をグシャグシャと撫で頭をギュッと絞めた。
「いーやー!!!髪っ!!」
「大人しくしろっ」
「……もー……何なの…」
諦めたのかリリアは大人しくなった。
力を抜き体をリヴァイに完全に預けている。
「今くらい……俺のでいろよ…」
あまりに小さく呟いたためにリリアの耳には届いていない。
「ねぇ、リヴァイ。みんなの所行く?きっと今お肉食べてるよ?」
「行かねぇ」
「じゃあ私が飲み物取ってきてあげる!持ってくるから二人で飲もうよ。何がいい?」
「なんでも」
リヴァイがようやくリリアを解放するとリリアは乱された髪を軽く直し立ち上がった。
「行ってくるね!ここにいてね?動かないでよ?」
「あぁ」
手を振ってリリアがその場を後にした。姿が見えなくなると再び目を閉じる。
"ここにいてね"という言葉が少しだけ嬉しかった。