第31章 #31 夢のため
辺りは暗くなっていた。
リヴァイは物影で一人、腰を降ろし静かに目を閉じていた。
すると背後から静かに近付く誰かの気配を感じた。
しかしリヴァイにはそれが誰だか分かっている。だから敢えて目も開けず、振り向きもしなかった。
近付いてきたその人物はリヴァイの背後から手を伸ばしキュッと軽く首に手を回した。
「声を出すな」
「んだよ、両手の骨を折りにきたのか?リリア」
「なんだー、バレてたか」
リリアはあはは、と笑いながらリヴァイの隣に座った。
「ねぇ、リヴァイ。お兄ちゃん、ちゃんとリヴァイの気持ち分かってるよ?」
「………もういい。オレはエルヴィンの命令に従うだけだ」
「そう」
「ただ……お前に一つ聞きたい」
「ん?」
見るとリヴァイはジッとリリアを見つめている。
その目は真剣だ。
「お前、本当にエルヴィンが死んだら自分も死ぬつもりか?」
「そうだよ」
何の迷いもなく答えたリリア、恐怖も何もないようだ。
「まぁ…要はエルヴィンが死ななきゃいいだけの話か」
「うん!みんなで無事に帰って来ればいいだけの話」
「みんなで無事に、か」
果たしてその理想通りにいくのだろうか。
簡単そうで一番難しい。
「なぁ、リリア」
「なぁに?」
リヴァイはリリアの頭に手を伸ばした。
逃げられると思ったが、リリアは逃げない、それが今のリヴァイにとってどれだけ嬉しいか。