第31章 #31 夢のため
「これ以上オレに建前を使うなら、お前の両脚の骨を折る。ちゃんと後で繋がりやすいようにしてみせる。だがウォール・マリア奪還作戦は確実にお留守番しねぇとな。暫くは便所に行くのも苦労するぜ」
エルヴィンはふふっと笑った。
「それは困るな」
すると今まで黙っていたリリアが口を開く。
「リヴァイ、確かに今の団長では戦う事が出来ない分、貴方の言うお荷物になるかもしれない。でもそれは私が支援する。そして何より、この世の真実が明らかになる瞬間には、兄が立ち合わなければならない」
リヴァイは開いた口が塞がらなかった。
この兄妹は本当に先程から何を言っている。
「それが、そんなに大事か?」
「大事」
「兄の脚より?」
リヴァイが一歩踏み出す。
「大事。私達を止めるなら私が先にお前の両手の骨を折ってやる」
リリアがリヴァイを睨むとリヴァイはチッと舌を打ち、エルヴィンに視線を移した。
「人類の勝利より?」
エルヴィンは力強い眼差しでリヴァイを見つめ、答えた。
「あぁ」
リヴァイは一瞬黙り、そうか、と呟いた。
もう何を言っても無駄だろう、体を反転しドアに手を掛け、エルヴィンの方を見る。
「エルヴィン、お前の判断を信じよう」
リヴァイはそれだけ言うと部屋を後にし、部屋に残ったエルヴィンとリリアは深く息を吐いた。