第31章 #31 夢のため
「各班を任せたぞ」
「あぁ、くれぐれも秘密裏にな」
「でも今日くらいは肉を食っても良いですよね!」
各班長、そしてハンジは立ち上がり、部屋を後にした。
すると今までずっと黙っていたリヴァイが扉を背中で閉め、皆を追い出す形で部屋に残った。
リリアも立ち上がり、エルヴィンの隣に立った。
じっとリヴァイがエルヴィンを見つめる。
「何だ?リヴァイ」
「気の早い話だが、ウォール・マリアを奪還した後はどうする。何より防衛策の確立が先だと思うが。その後は?」
「脅威の排除だ。壁の外にはどうしても我々を巨人に喰わせたいと思っている奴がいるらしいからな。もっとも、それが何なのかは地下室に答えがあると踏んでいる。だからさっき言った通りだ。地下室に行った後に考えよう」
「お前がそこまで生きてるか分からねぇから聞いてんだぜ?その体は以前のようには動かせねぇ」
エルヴィンは無くなった右腕の辺りを押さえた。
「現場の指揮はハンジに託せ。お荷物抱えるのはまっぴらだ。お前はここで果報を待て。連中には俺がそうごねたと説明する。いや、実際そうするつもりだ。それでいいな?」
視線を反らし、エルヴィンは再び父の事を考えた。
確かに今の自分の体では他の兵士の荷物になるだろう。しかし自分の夢がもう目の前にある。
父親の仮説を証明するという夢が。
エルヴィンは真っ直ぐリヴァイを見つめ口を開いた。
「ダメだ。餌で構わない、囮に使え。それに私の刃はリリアに任せる。指揮権の序列もこれまで通り、私がダメならハンジ、ハンジがダメなら次だ。確かに困難な作戦になると予想されるが、人類にとって最も重要な作戦になる。その為に手は尽くしてある。全て私の発案だ、私がやらなければ成功率が下がる」
「そうだ、作戦は失敗するかもしれねぇ。その上お前がくたばったら後がねぇ。お前は椅子に座って頭を動かすだけで十分だ。巨人にとっちゃそれが一番迷惑な話で、人間にとっちゃそれが一番良い選択の筈だ」
「いいや、違う。一番はこの作戦に全てを賭ける事に……」
「オイオイオイオイ、待て待て」
リヴァイはエルヴィンの話を途切らせた。