第30章 ●#30 祝福される嬉しさ
時間になりエルヴィンはナイルと今後の事を話し合い、それが終わると、街に出て久し振りに二人での夕飯をとるため店に入った。
なかなか普段は来れそうにない、高級そうな雰囲気のある店だ。
席に着くとナイルが小さく息を吐く。
「何故お前と二人でこんな店に…」
「たまには良いだろう?」
「リリアちゃんも誘えよ。何が悲しくて男二人で来なきゃいけないんだ」
「今日はお前に報告しなくてはならない事があるんだ。お前の反応によってはリリアを傷付けるから連れて来れなかった」
ナイルが首を傾げる。
自分がリリアを傷付けるかもしれないとはどういう意味なのだろうか。
エルヴィンは手を上げると店員を呼び酒を頼んだ。
「で?報告とはなんだ?」
「あぁ、次の作戦が終わったらリリアと結婚する事にした」
「………すまない、よく聞こえなかった」
「次の作戦が終わったらリリアと結婚する」
「………俺はどうやら幻聴が聞こえ始めたらしい…」
「そうか、病院に行った方がいいな」
「いやいやいや!!!」
ナイルは体を前のめりにしてエルヴィンを見た。
その目は信じられないと言いたげだ。
「冗談にも程があるぞ」
「冗談なんて言っていない」
大きく息を吐き、ナイルが椅子に座り直すと酒が運ばれてきた。
コップに注がれ揺れている酒を見つめながらナイルがゆっくり口を開く。
「する事にしたって事は既にもうリリアちゃんと一緒に決めたんだな?」
「そうだ」
「そうか……成る程なぁ」
エルヴィンはナイルを見つめた。
考えていた返答とは違った。いくら二人の事を知っているナイルでも、もっと反対すると思っていたからだ。