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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第30章 ●#30 祝福される嬉しさ



団長室、そこには山のように積まれた書類を処理しているエルヴィンと、それを手伝うリリアの姿があった。
エルヴィンが手を動かしながらリリアに話しかける。

「リリア、これが終わったら少し出掛けてくる」
「ん?どこに?」
「ナイルの所だ。ついでに食事も済ませてくるから」
「えー!!私もナイル兄ちゃんと話したい!」

困った顔をしてエルヴィンは首を振った。

「今回リリアは留守番だ。今後の調査兵団と憲兵団の事と、あと男同士の大事な話がある」
「男同士……それは私は立ち入り禁止だ」

納得したように頷くリリアだが、少し寂しそうだ。
ふふふ、とエルヴィンが笑う。

「お土産買ってくるからおとなしく待ってなさい」
「お土産!!」

しょげた表情から一転、パァッと喜びの顔を見せたリリアにエルヴィンは可笑しくて仕方がない。
手を振りリリアを呼ぶと首を傾げてリリアが近付いた。
椅子をずらすと自分の太ももを叩き、ここに座れと促す。

「え?座っていいの?」
「おいで」

嬉しそうにリリアがエルヴィンの太ももにちょこんと座ると、エルヴィンが後ろからギュッとリリアを抱きしめる。

「ナイルには俺達の事を話しておこうと思ってな」
「そうだね。ナイル兄ちゃんビックリするかなぁ?」
「かなり驚くだろうな。だからまずは俺だけで報告がしたいんだ。分かってくれるか?」
「うん!」

良い子だ、とエルヴィンはリリアの髪の毛にキスをした。

「その代わりお兄ちゃんの部屋で待っててもいい?」
「構わないよ。ただ遅くなるかもしれないから先に寝ていなさい」

はい、と返事をしたリリアの声は嬉しそうだった。
何を言われてもいいように今回ばかりはリリアを連れて行くわけにはいかない。
ナイルがどんな反応を示すのか、エルヴィンにほんの僅か不安が過っていた。

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