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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第28章 #28 戻りたくない



家に戻ると二人は買ってきた果物を切り、軽く朝食を取った。
次はいつ帰れるだろうか、外に乾かしていたシーツを取り込み畳んでいるとリリアは昨夜の行為を思い出した。

恥ずかしくて、少し怖かったが…
エルヴィンに愛されて嬉しかった

普通なら想いを伝え合ったら幸せな日々が続くのだろう。
しかし自分達は調査兵団、エルヴィンに至っては団長だ。
命をかけて戦っている自分達は『幸せ』とは逆の方へ向かう事となる。

それに自分達は兄妹だ。
血は繋がっていないといえど、周りの目がある。
本当はもっともっと……愛されたい。


「でも表に…出せない」


リリアは立ち上がると机の上に飾っていた昨日もらったブーケの花を花瓶から引き抜いた。
そして自分の部屋で本を読んでいるエルヴィンに声をかける。

「お兄ちゃん、ちょっと出掛けてくる」
「どこへ?体調が悪いんだからあまり出るんじゃない」
「すぐ戻るから!行ってきます」

外に出ると真っ先に向かったのは少し大きめの水路だった。
ここでは住民が野菜を冷やしたりする綺麗な水が流れている。
リリアは誰もいない事を確認するとしゃがみ、持っていた花を一本一本流していった。


「ごめんね、折角ブーケ貰ったのに……私、結婚できないから」

ブーケトスを受け取った人が次に結婚をするジンクス、きっと他の人が受け取っていればもしかしたら当たるのかもしれない。
しかし自分には当たらないジンクスだ。だから受け取った花は自然へと返そう、そう決めた。


「ありがとう、一瞬だったけど嬉しかった」


流れていく花を見ているリリアを少し離れた場所から見守っていたエルヴィン、視線を落とすと先に家へと戻っていった。

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