第26章 #26 返事を聞かせて
「お兄ちゃん……ありがとう。本当に……私を助けてくれてありがとう。出会えて良かった…」
「俺の方こそ……リリアに会えて良かった。父を…自分のせいで亡くした罪悪感に押し潰されそうになっていた……でも…リリアのおかげで……毎日が幸せだった」
エルヴィンは顔を上げるとリリアの頬を優しく撫でた。
「俺が誰かを愛する資格なんてないのかもしれない。でも……好きなんだ……愛してる、リリア」
「うん……私も」
添えられた手に擦り寄るとジッとエルヴィンを見つめるリリア、暫く見つめ合っていたがやはり恥ずかしくなりお互いに下を向いてしまった。
今まで兄妹として何気なく毎日を過ごしていたが、思いを告げるとどうしても意識してしまう。
「よ、夜も遅いし…もう寝ようか」
「え?あ、そう、だね」
確かにもう外は暗いが遅いという訳ではない。
エルヴィンが今の空気に耐えきれなくなったのだろう。
机の上のランタンの灯りを消し二人は互いの部屋へと戻ろうとした。
「お兄ちゃん、明日はいつくらいに兵舎に戻るの?」
「あぁ……正午ごろには戻ると伝えているが」
「ん、分かった」
「あ、リリア」
「なに?」
何かを言いかけようとしたがエルヴィンは言葉を飲んだ。
「いや、おやすみ。また明日」
「お兄ちゃん」
呼ばれ、踏み出そうとしていた足を止めるエルヴィン、振り向くとリリアが近付きギュッと服の端を握ってきた。
「……一緒に寝てもいい?」
「え…?」
「添い寝…」
「あ、あぁ…添い寝な……構わないよ」
おいで、とエルヴィンは自分の部屋へとリリアを入れた。