第26章 #26 返事を聞かせて
「帰り際はすまなかった。傷付けてしまったな」
「別に気にしてないよ」
「ならどうしてあれから機嫌が悪いんだ?」
「悪くないし…」
リリアは俯いたまま顔を上げない、エルヴィンは苦笑いをすると机の上に置かれていたリリアの手に自分の手を重ねた。
ジッとリリアはその手を見つめている。
「こうやって二人で話す機会はなかなか無くなると思うから…もう伝えようと思う。俺の気持ちを」
「……やっぱり私は妹以上には見えないって事?散々好きだとか、キスしたりしてきたクセに……いざとなったら回避するもんね」
「だからあれは……」
「私はお兄ちゃんの事……大好きなのに…」
「俺も好きだよ」
グスッとリリアが鼻を啜る。
どうやら泣き始めてしまったらしい。
「正直…周りの目を気にする事があるのも事実だ。昔からの知人ならともかく、殆どの者は我々が本当の兄妹だと思っているからね」
「……うん。分かってる」
「でもな、リリア。最近俺、少しおかしいんだ」
え?とリリアがエルヴィンの顔を見た。
「おかしいって……体調が?どこか痛いの?」
「あー……まぁ、痛いと言えば痛い」
「ど、どこ?!お医者さんに!!」
目を丸くするエルヴィン、どうやらリリアはエルヴィンの体調がおかしいと勘違いしているようだ。
「そうだな……胸、かな」
「胸……心臓?頻繁に痛いの?どうして早く言ってくれなかったの?我慢しちゃ駄目だよ!早くお医者さんに行こう?」
「ふふふ……」
急に笑い出したエルヴィンにリリアは首を傾げた。
「違うよ。確かに胸が痛む時があるけど病的なものじゃない」
「え?」
「リリアが他の男と仲良くしている時に胸が痛い。まぁアレだよ…嫉妬?俺はリリアに相応しい者が見つかるまでで良いと言ったが、とてもじゃない独占欲が強すぎて無理みたいだ」
握った手に力を込める。
リリアもジッとエルヴィンを見つめたまま動かない。