第26章 #26 返事を聞かせて
「私も一緒に入ろうかな」
「は?」
「お兄ちゃん片腕だし、お風呂一人じゃ大変でしょ?一緒に入った方が効率的だし」
「いやいや、効率どころの話じゃない」
かなりエルヴィンは焦っている。
「昔は毎日一緒に入ったじゃない」
「あの時はまだお前は小さかったから……」
「別に恥ずかしがる事じゃないでしょ?お兄ちゃんなんだから」
何故か"お兄ちゃん"を強調してくる。
これは先程の仕返しだろうか、表情も笑っていない。
「リリア……お前はそんなに意地悪な子だったか?」
「冗談だよ、お湯冷めちゃうから早く入って。ご飯用意しとく」
おそらく今は何を言っても駄目だろう、エルヴィンは大きく息を吐くと風呂へと向かった。
風呂から上がると机の上には食事が用意されており、リリアは花瓶に挿したブーケの花を眺めていた。
「リリア、上がったよ。入っておいで」
「うん。先に食べてて」
「待っている。一緒に食べよう」
そう、と少し素っ気なく答えリリアも風呂へと向かった。
エルヴィンも花を見つめ自分が発言した後のリリアの悲しげな表情を思い出していた。
もういい加減ハッキリさせた方がいいのだろう、リリアに相応しい者が現れるまで、なんて本当は思っていない。
リリアを自分のものにしたい、その欲求は大きい。
彼女自身もエルヴィンのその曖昧さで戸惑っているのだ。
暫く待つとリリアが戻ってきた。
二人で食事をとるが、その際も会話はない。
「……」
「………リリア」
「何?」
「片付けたら少し話をしようか」
落としていた視線を上げ、リリアがエルヴィンを見るがすぐに下を向いた。
「話す事なんてないけど」
「言い方が悪かったな。俺から話がある、聞いてくれないか」
「今じゃないといけないの?」
「二人きりの時に話がしたい」
分かった、とリリアはお茶を淹れ自分とエルヴィンの前に置いた。
少し沈黙が続き、ゆっくりエルヴィンが口を開く。