第22章 #22 素直になれない
リリアを部屋に運んだエルヴィンは泣きじゃくり、ごめんなさい、と連呼している彼女の背中を優しく撫でた。
「大丈夫、大丈夫だ。謝らなくていい、お前は何も悪くないよ」
まだリリアが子供の頃、両親から受けた虐待を思い出して、夜に泣き出してしまう時があった。その時もエルヴィンはこうしてリリアの背中を優しく撫でて落ち着かせていた。
おそらく先程のリヴァイの行動がフラッシュバックさせてしまったのだろう。
かなり精神的に乱れてしまっている。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「リリア、ほら、顔上げて。俺の顔を見てごらん?大丈夫、大丈夫」
「お兄ちゃん……私、リヴァイに何かしたのかな」
「何もしてない。リヴァイはちょっと今、自分の気持ちが分からないだけだ」
エルヴィンがリリアをベッドに寝かし、頭を撫でる。
「もう大丈夫だから、寝なさい。明日も早い」
「お兄ちゃん……」
「ん?」
「………一緒にいて」
「俺は今からリヴァイに説教だ」
リリアがエルヴィンに手を伸ばす。
エルヴィンはその手を取り手の甲に口付けするとそっと下に降ろした。
「おやすみ、リリア。また明日」
「お兄ちゃん……行かないで…」
「………また後で来るから寝ていなさい」
「うん……絶対だよ…」
明かりを消し、エルヴィンはリリアの部屋から出た。
部屋から出たエルヴィンのその眼差しはとても厳しいものだった。
暫くして言われた通り、リヴァイがエルヴィンの部屋に訪れたが、その表情は暗く足取りも遅い。