第22章 #22 素直になれない
「いかにも、ダリス・ザックレーの野望には勘付いておった。ワシはお主と違って賭け事は好まん。またお主らと違って己よりも生き残る人類の数を尊重しておる」
リリアは眉をひそめ、その話を聞いた。
「お主の提案に乗ったのはそれが人類にとって最善だと思うたからじゃ。その結果王政に付くべきと風が吹けばザックレーと争う事も覚悟しとった。と、まぁ、ワシらクーデター直後の仲間同士でさえこの有様じゃ。いつか人は争いを辞めるとか誰かが謳っておったが、それはいつじゃ…」
人がいれば争いは生まれる。
争いのない世界、そんな時はいつかくるのだろうか。
「団長!総員、準備が整いました!!いつでも行けます」
声をかけられ、エルヴィンとリリアは顔を上げた。
今は今できる事をやらなければ。
エルヴィンはピクシスに向かって口を開いた。
「人類が1人以下まで減れば、人同士の争いは不可能になります」
「ふっはははは!!そんな屁理屈が聞きたかった訳ではないわい」
リリアはエルヴィンにマントを着せた。
ボタンを閉め、行ってらっしゃいとの意味を込めポンと胸を叩く。
その手を握り返すとエルヴィンは小さく行ってくる、と呟き、兵士達の前に向かった。
「総員整列!これよりエレンおよび、ヒストリア奪還作戦を開始する!目標と思われるレイス領地礼拝堂を目指す!!」
そして調査兵団はレイス領へと向かっていった。
どうか無事で全員で戻ってきますように、そう心の中で祈った。