第22章 #22 素直になれない
すでに陽は落ち、辺りは暗くなっていた。
リリアは他の調査兵と混ざって出発の準備を手伝った。
「これはあっちの荷馬車に乗せるの?」
「はいっ!あ、リリア兵長こっちです!」
そんなせっせと準備をしているリリアの姿をエルヴィンが視界に入れる。
エルヴィンは一瞬目を見開いたが、呆れたように息を吐いた。
あれだけ休めと言ったのに。
「リリアっ!」
「あ、見つかった」
「どうしてお前は言う事を聞かない…」
「もう肩も動くし、私だけ休むわけにはいかないよ。レイス領までは着いて行かないから、これくらいは手伝わせて」
エルヴィンは諦めた。
一度決めたらこの子はなかなか意見を曲げない。
その時だ。少し離れた所からピクシスがエルヴィンに声をかけ歩み寄ってきた。
「マズイの、エルヴィン。王政幹部は皆同じ事を吐きおったぞ。お主と父君の仮説通りじゃ」
王政幹部を捕らえ、これまでの事を聞き出した事をピクシスはエルヴィンに報告しにきたようだ。
「レイス家は人類の記憶を都合良く改ざん出来るという訳じゃ。しかも奴らを含む一部の血族はそれに影響されないといった口振りだったぞ」
「っ?!そんな事が……」
レイス家のその記憶を改ざんする力があれば、エレンを捉えさえすれば民衆の反乱など、どうという事もないという事らしい。皆、恥もせず話したようだ。
「なるほど。そんな重要な情報さえ我々はいずれ忘れ去る、と」
「じゃがまぁ、どのみちザックレーの手にかかり、我らからの拷問を受け続けた方がマシだったと思っておるだろう。分からん奴じゃ。アレが生涯を捧げてやりたかった事とはのぉ」
「司令、知っていたのですか?」
エルヴィンの問いに、ピクシスはしまった、という顔をした。
つい口が滑ったようだ。