第19章 #19 死線を越えろ
「今日の朝、王都に召集され、俺は今の王政に人類を任せても大丈夫なのか見極めてきた。彼等は自分達の名誉の事や財産の事ばかり考え、とても人類を任せられるとは思えない。リリア、我々はウォール・マリア奪還のため王政を打倒する」
リリアが目を見開く。
「それはクーデターを起こすという事?」
「あぁ、俺の推測が正しければ今回の計画において武力を行使するつもりはない、人を殺す事もない。ただ、それが叶うのに最も重要な根拠がまだない。もしその根拠が違っていれば我々は皆、首をくくる事になるだろうな」
「お兄ちゃんの言う根拠というのは、さっき言ってた本当の王家の事?」
「そうだ。俺の推測ではおそらく……レイス家が本当の王家だろう」
何となくだがリリアもそんな気はしていた。
中央が何故エレンだけでなくヒストリアまでも引き渡しを命じたのか、何よりニックがヒストリアを監視しろと言われていた理由もおそらくそれだろう。
それを事実にするには事実を知っている中央第一憲兵団の兵士から自白させるしかない。
だからエルヴィンは先程サネスに吐かせろと言ったのだ。
サネスはニック司祭を殺した犯人、おそらく口封じにニックを殺した。
だとすれば彼は知っているのだ、事実を。
「なるほどね」
「リリア、もう本当に逃げられなくなる。大丈夫か?」
「お兄ちゃんはしつこいなぁ。もう何度大丈夫だって言った?」
「命の保証はしない」
「貴方に心臓を捧げると言った。貴方のためなら死んでもいい」
エルヴィンが苦笑いをした。
「すまない、リリア……」
「………仕方ないなぁ。これから大変になるなら元気補充しなくちゃいけないな」
するとリリアはエルヴィンの方へ体を預け、目を閉じた。
エルヴィンも目を閉じるとリリアの肩を抱いて体重をリリアに預けた。
「じゃあ俺も今のうちに補充だな」
「あはは!」
「リリア…お前は以前俺に家族になってくれてありがとう、と言ったな」
「うん」
「俺の方こそ、ありがとう。リリアの覚悟、受け取った」